PEOPLE 03インタビュー:末永 智也時代のニーズから生まれた
「通販インフォマ」という
広告コミュニケーション

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インターネットやSNSの発達で
消費者とのコミュニケーションが急激に変化する中
キックファクトリーでは2022年から
「通販インフォマ」という映像サービスを始めました。
新事業を牽引するのは、1990年代初頭から広告映像に携わり
数多くの「広告」に関する映像を手がけた実績を持つ末永智也。
このコーナーでは広告映像全般の潮流や
通販インフォマについて末永がQ&A形式で解説します。

プロデューサー
末永 智也

キックファクトリーが始めた「通販インフォマ」とは何ですか?

末永:
「通販番組」+「インフォメーション」+「コマーシャル」を合わせた造語で、略して「通販インフォマ」と呼んでいます。すごく分かりやすく簡潔に説明すると、二次利用の検討も可能な通販番組をイメージしてもらえると良いでしょう。

通販番組との違いをもう少し具体的に聞かせてください。

末永:
通販番組はテレビ局の放送枠を使ってテレビで流すものです。30分や60分という長さのものが多いと思います。
テレビ局のスタジオで起用したタレントに台詞や感想を言わせて、商品やサービスの魅力を視聴者に伝えます。通販番組はライブ形式で、放送時間の一回のために作られるものも多く、その番組著作権は「販売元」にはなく番組の制作側に帰属します。そのため、通販番組でつくった映像は基本的には、その時間のその枠でしか使えません。

なるほど。では通販インフォマの場合はどうでしょうか?

末永:
通販インフォマは通販番組のような映像を販売元が自前で製作するので、権利を所有でき、二次使用が検討できる点が違います。テレビ番組のように決まった放送枠ではないので、映像の長さは商品の特性や使用用途に合わせて最適な時間を選択できます。

1本の映像を色々なシーンで使えるわけですね?

末永:
その通りです。自社のWebサイトや公式YouTubeチャンネルはもちろん、販売促進会や展示会など、どこでも利用が可能です。

汎用性のある広告映像の利点をどのようにお考えですか?

末永:
昔は広告映像と言えば、テレビCMが主でした。しかし現在は、映像を観るツールやサービスが増えていて、テレビよりインターネットを観ている時間の方が長い人もいる時代です。ターゲットが集まる適切な場所に、最適なタイミングで流せる映像を持つのは、PR活動において大きな武器の一つになるでしょう。

昔と今では広告映像の役割や意味も変わってきたと?

末永:
広告は時代によって随分と変化しています。広告映像でも昔はCMがほとんどでした。15秒という短い時間で、企業の名前や商品の特徴、知らせたい内容をテレビの前の視聴者に届けます。一瞬で終わってしまいますから、先人はいかに印象に残すかを考えました。その結果生まれたのが、インパクトや覚えてもらうためのCMソング、タレントの起用などです。それによって制作費は高くなりますが、高い放送代金を考えたら、その後の口コミや反響を重視するようになったと言えます。

近年は、テレビよりもネットに重心を置く企業も多いですよね。

末永:
CMと言ってもテレビとは限らなくてWebでも展開されています。ここで重要なのは「接触頻度」と「メディアの違い」を理解しているかどうかです。ご存知の通りテレビは「マスメディア」です。やはり黙っていても、相当沢山の視聴者がいますので、見てくれる人は多いです。逆にWebは、いくら作って出しても、興味がない人は近づいて来ません。だからWebムービーなどは、制作費を抑えて、それでもテレビCM並のクオリティを求められます。そうした中、ここ15年程前から活発になったのが通販番組と通販インフォマです。インパクト勝負だったCMとは違い、誠実さや事実・真実の情報を伝える役割も担っています。CMが全ての人を対象とする映像なら、通販番組はその商品に興味のある狭い人を対象としたコンテンツになります。商品を詳しく説明する映像コミュニケーションである通販番組の需要が高まると同時にインターネットの技術が進化。色んな場所で映像の視聴が可能となった環境が、通販インフォマの必要性を押し上げたと言えるでしょう。

なるほど。では、通販系の映像制作で難しい点を教えてください。

末永:
発展途上の広告であり、生き物のように変化し続けています。常に現場の第一線で関わっていないと、半年前の情報が役に立たないような世界だと感じます。具体的に言うと、半年前は言って良かった成分の名前や効能が、気づけば言えなくなっていたりとか。世の中の動向や、世間の風向きによっても左右されるし、流行りなどもある。例えばどこかの学会で「何とかという成分」が発見され期待されると、メーカー各社はこぞって「何とかという成分」入りの商品を作る。ところが、「何とかという成分」にそうした効果効能がないと、別の学会などで証明されたら、一気に劣勢になるといった具合に「常に今」を知らないと他社との競争に勝てない。それが通販系の広告映像です。

CMより消費者と具体的なコミュニケーションを取りますからね。

末永:
CMはイメージを売り、通販系はモノを売ります。売買に直結する分、嘘や大げさ、紛らわしい表現は使えません。それを理解した上で映像をつくらなければいけないのです。通販系の映像には広告と共に情報提供という側面もあります。私の場合は「広告としての側面」と「情報を深堀りする側面」という両方で経験を積み、知見を磨いてきた自負があります。

末永さんはどのような映像制作の人生を歩まれてきたのですか?

末永:
最初に入った会社はCM制作会社です。そこで演出を学んだ後、親会社である「広告代理店」に席を置きました。この2社で広告映像の基礎を学びましたね。CMだけでなく、ビデオパッケージなども多く手掛けて、企画・演出の基本と、プレゼンのテクニックを実戦の中で勉強した感じです。特に、広告代理店に入って良かったことは、それまで在籍していた「制作会社」以外の皆さんとのお付き合いが増えたこと。そして自分以外のさまざまな演出家の現場に多く立ち会えたという点です。現場を俯瞰して見る習性を得ることができ、「他人の立場を考える」「自分ならどうする」「いま問題は何か」など、映像制作者としてさまざまな訓練を積むことができたんです。この経験から、最短距離で仕事を収束に導くという、この業界でとても大事なスキルも磨けたと思います。

映像業界で影響を受けた方がいるそうですね?

末永:
市川準という「CM界の巨匠」「映画界の異端児」と呼べる監督です。お亡くなりになってから10年以上経ちますが、業界に未だ根強いファンのいる監督です。「禁煙パイポ」「金鳥」「タンスにゴン」「サントリーオールド」「ヤクルトタフマン」「となりのハイムさん」などなど、手掛けたCMを挙げればキリがなく、映画も年1本のペースで精力的に制作されていました。
私が「CMって面白い」と興味を持ったきっかけでもあり、文字通り「最後の弟子」として20年近く師事していました。

監督から学んだことは何ですか?

末永:
昔の映像業界ですから、一から教えてもらったことはありませんが、市川監督の後ろ姿からは多くの教えを得ました。
「最後まで諦めない心」だったり、撮影の現場は「プロとプロが意見を出し合って、さらにより良い映像を目指す場」という考えや心得などが染み付いています。

市川 準 監督【写真提供:市川 準 事務所】

日本の映画監督、CMディレクター。 CM演出家を経て1987年に『BU・SU』で映画初監督。 以降、幅広い題材に意欲的に取り組み話題作を数多く発表した。 2008年 59歳でこの世を去ったその日も、ご一緒でした。

今後の展望を教えてください。

末永:
映像の活躍の場は時代と共に変化し、映画からテレビ、そしてWebへと移り、さらにこれからも変化していくでしょう。それにより表現方法は変わりますが、「映像」というコンテンツは変わらず存在し続けます。キックファクトリーは「時代に合った映像を生み出す、映像全般を扱うプロ集団」です。仲間たちと共に、これまでと変わらず真摯に映像と向き合いながら、今以上にクオリティの高い映像を追求します。

TOMOYA SUENAGA末永 智也

1992年にCM制作会社 キャットに企画演出として入社。その後、広告代理店 東急エージェンシーを経て、1998年からフリー演出としてCM・インフォマ案件を数多く手がける。2018年から通販番組制作会社である東京テレビランドに勤務。2021年からキックファクトリーの所属となる。

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